ジャスミン精油と一言で言っても、その奥には深い世界が広がっています。
アロマテラピーで使用されるジャスミンには、オフィシナリス、グランディフローラム、サンバックの3種類があり、それぞれ香りや作用が異なることをご存じでしょうか?
この記事では、ジャスミン精油3種の学名・香り成分・効果の違いを、アロマ講師の視点からわかりやすく比較しながらご紹介していきます。
ジャスミン精油の選び方に迷っている方も、アロマをもっと深く楽しみたい方も、ぜひこの奥深い世界に触れてみてください。
アロマテラピーで使用する精油と身近にある同じ呼び名の植物は同じなの?
今年も外に出ると、数メートル先から濃厚な羽衣ジャスミンの香りが漂ってくる季節になりましたね。
アロマ初心者さんだと「ジャスミン」という名前がついている植物とアロマテラピーで使用する「ジャスミン」と同じ植物なんだろうか?
精油の「ジャスミン」の植物はどの種類なのかな?
お花の色は?
お花の形は?
と疑問が湧いたりすることはないでしょうか?
NARDアロマテラピー協会のアロマアドバイザー講座では40種類の精油を学びます。
「ゼラニウム」「ラベンダー」「ユーカリ」なども
お花屋さんや園芸屋さんでよく目にする植物名ですよね?
この植物はレッスンで使っている精油と同じ植物なの?
もし、違うなら、精油の元となる植物はどんな形のどんな色のどんな植物なのかな?
と疑問に思われるのではないかと思います。
私もアロマを習い始めの頃は思いました。
アロマレッスンでは植物から抽出した精油の成分、作用、使い方、香りについてなどは深く学びますが、
原料の植物までは意外と触れなかったり、触れても
さらっとしか説明されなかったりすることもあります。
でも、精油の原料となる植物のことを知っていると、精油の扱いがより奥深くなり、味わい深いものになります。
ぜひ、少しずつ、使っている精油の元となる植物そのものについて探求していきましょう。
ジャスミン精油に使われる植物はどの種類?
実は植物は同じ名前の植物でも何百という種類があります。
精油のジャスミンの原料となる植物は、私たちが街でよく見かけるハゴロモジャスミンとは異なる種類です。
見分けるポイントは、「学名」で同一の植物か否かを確認することです。
学名とは、世界共通の植物につけられた正式な名前のこと。
これを知ることで、より正確に植物を見分けることができるようになります。
見分けるポイントは学名で同一の植物か否かが確認できます。
学名とは世界共通の植物につけられた名前のことです。
ジャスミン精油の代表的な3種類
➀Jasminum officinalis(オフィシナリス)
風ら花で使用しているプラナロム社(精油メーカー)のジャスミン精油です。
②Jasminum grandiflorum(グランディフローラム)
ソケイ、オオバナソケイとも呼ばれるジャスミンです。
こちらからも、精油が採れます。
③Jasminum (サンバック)
マツリ(茉莉花)、アラビアンジャスミンとも呼ばれる種類のジャスミンです。
ジャスミン茶の香りづけに使われる種です。
こちらからも精油が採れます。
➀~③は精油が採れるジャスミンです。
どのジャスミンから精油を採っているかは、精油メーカーによって異なります。
それぞれ、香りが違いますので、お好みのものを選ばれるとよいと思います。
精油には使われない羽衣ジャスミン
④Jasminem polyanthum(ポリアンサム)
ハゴロモジャスミン。
こちらからは精油は採りません。
観賞用として、お庭で育てている方が多いですね。
となりますので、精油の原料のジャスミンとハゴロモジャスミンは植物の種類が違うことが分かりますね。
学名からわかるジャスミンの違いと意味
1つ1つの植物につけられた世界共通の名前の「学名」から植物の様々なことが分かります。
学名は、2つの単語から構成されています。
◆前半の単語(属名)は、その植物が属しているグループを表します。
➀Jasminum officinalis
②Jasminum grandiflorum
③Jasminum sambac
④Jasminum polyanthum
全て「Jasminum」という属名がついています。
これはモクセイ科ジャスミナム属(ソケイ属)を意味し、「Jasminum」の語源はペルシャ語「ヤースミーン」──”神様からの贈り物”という意味に由来しています。
この語源を知った時、この素晴らしい香りをもつ植物にまさにピッタリ♪と感動しました。
◆後半の単語(種小名)は、それぞれの植物の特徴を表しています。
ここでご紹介した4種とも「種小名」が異なり、それぞれ違った意味があります。
➀officinalis (薬用の)
②grandiflorum (大きな花の)
③sambac (永遠の愛を誓う)
④polyanthum (多くの花)
この種小名の意味を知るだけでも、植物に対する親しみがぐっと深まりますね。
資格取得のテスト対策としては、黙々と覚える学名ですが、こうやって意味を考えながら学ぶと楽しくなりますね。
ジャスミンの香りの成分
ジャスミンと一言で呼ばれますが、実は種類によって含まれる香り成分が異なり、それぞれに個性があります。
そのため、ジャスミンの種類によって、香りに違いが生まれます。
この情報は長谷川香料株式会社様のジャスミンの香りの多様性~ジャスミン3種の香気分析~を参考にさせて頂きました。
🌿ジャスミンに共通する香り成分
ジャスミン3種に共通する代表的な成分は、次の2つです。
酢酸ベンジル(benzyl acetate)
インドール(indole)
この2つの成分によって、ジャスミンに共通する清楚で上品な香りが生まれます。
特に「インドール」は不思議な成分で、微量であれば上質なフローラルの香りを感じますが、濃度が高くなると、なんと「糞」のような強烈なにおいに変化します。
香りの世界の奥深さを感じる瞬間ですね。
ブレンドするときに、各精油を何滴加えるかがとても重要なのは、こうした成分の濃度変化に繊細に影響されるためです。
🌿それぞれのジャスミン精油に特徴的な成分
◆ Jasminum officinalis(オフィシナリス)
(風ら花で使用しているジャスミン)
安息香酸ベンジル
→ほのかにバルサム(樹脂系)のような甘く温かみのある香りが加わります。
◆ Jasminum grandiflorum(グランディフローラム)
(ソケイ)
リナロール
ジャスモン酸メチル
オイゲノール
(E)-イソオイゲノール
ジャスミンラクトン
→さわやかで軽やかなフローラル感に、ほんのりスパイシーなニュアンスが加わった香りです。
◆ Jasminum sambac(サンバック)
(茉莉花)
リナロール
酢酸(Z)-3-ヘキセニル
アントラニル酸ジメチル
→ グリーンでフレッシュな印象の中に、オレンジフラワーのような甘さも感じられる香りになります。
個人的には、このサンバックが一番のお気に入りです。
◆ Jasminum polyanthum(ポリアンサム)
(ハゴロモジャスミン)
オイゲノール
(E)-イソオイゲノール
4-メチルグアヤコール(methylguaiacol)
4-プロピルグアヤコール
バニリン
パラクレゾール
→ 精油としては使用されないものの、濃厚で力強い香り成分を多く含みます。
庭先で咲く羽衣ジャスミンのあの芳香はこれらの成分によるものです。
ジャスミンの抽出法
ジャスミン精油は、「溶剤抽出法(アブソリュート)」という方法で抽出されています。
この方法は、ノルマルヘキサンなどの揮発性の有機溶剤を用いて芳香成分を抽出し、その後、溶剤を揮発させることで精油成分だけを取り出す技術です。
ただし、微量ではあるものの、溶剤が完全に除去されない可能性があるため、この抽出法によって得られた精油は、主に芳香目的での使用が推奨されています。
皮膚に塗布する場合には、特に濃度に注意し、肌への負担をできる限り抑える使い方を心がけましょう。
精油の抽出法については、こちらの動画でもわかりやすくご紹介していますので、よろしければ、ぜひご覧ください。
ジャスミン精油の効能・効果
精油が抽出されるジャスミン3種(➀Jasminum officinalis ②Jasminum grandiflorum ③Jasminum sambac)には、共通して酢酸ベンジル(benzyl acetate)という成分が多く含まれています。
この成分により、ジャスミン精油にはさまざまな心身への嬉しい作用が期待できます。
🌿ジャスミン精油に期待できる主な作用
➀ 肉体的にも精神的にもリラックス作用
身体の筋肉だけでなく、心もふわりと緩めて、ゆったりとした安らぎの状態へ導いてくれます。
② 誘眠作用
眠れない夜にジャスミンの香りをそっとかぐと、
自然な眠りへと優しく誘ってくれます。
※ただし、使用量は1滴程度がおすすめです。
多量に使うと香りが強くなりすぎ、逆に眠りを妨げてしまうこともあるので注意しましょう。
③ 幸せな気持ちになる
幸福感を感じるエンドルフィンの分泌を促してくれます。
「今ここにいる幸せ」を感じさせてくれるでしょう。
④ 痛みの緩和
リラックスして幸せな気持ちになったり、心が穏やかになることで、痛みの感じ方もやわらぎます。
嗅覚経路を通じた心の鎮静効果に加えて、ジャスミン精油を植物油などで希釈して皮膚に塗布することで、より身体にもやさしく働きかけてくれます。
⑤ 催淫作用(フェロモン的な作用)
ジャスミン精油には、異性を引き寄せるようなフェロモン的な作用があるとも言われています。
これは成分による生理作用ではなく、香りそのものが持つ、心理的な魅惑効果によるものです。
占星術的な観点からのジャスミン
香料業界において、ジャスミンは「ローズ」「ミュゲ(スズラン)」と並び、三大フローラルのひとつに数えられています。
また「ライラック」を加えて、四大フローラルと呼ばれることもあり、香り創りには欠かせない存在です。
その優雅で華やかな香りから、ジャスミンは「香りの王様」とも称されます。
占星術的に見ると、ジャスミンは獅子座の象徴とされるオイル。
堂々と自分を表現したいときや、自分自身の魅力を輝かせたいときに、ジャスミンの香りをまとうと、自然と自信が湧き上がってくるかもしれません。
事実かどうかは定かではありませんが、古代エジプトの女王クレオパトラが、ローズやジャスミンを用いて男性たちを魅了したという伝説も残っています。
彼女の美貌と知性、そしてそこに加わったジャスミンの香りが、人々を心理的に惹きつけたとしても、不思議ではない気がしますね。
ぜひ、あなたもジャスミンの香りを味方にして、自分らしい魅力を引き出すひとときを楽しんでみてください。
参考文献
ジャスミンの香りの多様性~ジャスミン3種の香気分析~(長谷川香料株式会社様)
※②Jasminum grandiflorum、③Jasminum sambac、④Jasminum polyanthumの含有芳香分子と香りに関して参考にしました。ナード・アロマテラピー協会『精油事典』
ナード・アロマテラピー協会『精油小事典』
『ハーブ学名語源事典』東京堂出版